地中海西側うろうろ 66日目
朝起きたら既にサルディーニャ島を通過しており、周りは海だけだった。この後はバルセロナまで島らしいものはない。
デッキに出てみると、鏡のような穏やかな海を進んでいる。行きも感じたけれど、瀬戸内海みたいだ。
本には“海賊は秋には来なくなる”とか“海が荒れる前に十字軍の遠征なども終えないといけない”とあったので、もっと荒れるのかと思っていた。
ただ、夕方、急にモヤの中に入ったと思ったら全く見通しの効かない真っ白の世界になった。太陽の方向すらわからない。船はずっと汽笛を鳴らし続けて進む。デッキに出ることも控えるよう放送があった。
往路も復路も夜暗くても汽笛は鳴らしてはいなかった。甲板で寝てもOKだった。そう考えると、地中海の秋からの悪天候とは、霧のことなのかもしれない。
さて、そんな船内では読書がはかどる。
※白くなる前
デッキに出られない犬の散歩が頻繁に行き来する館内で、真っ白な窓を眺めながら「ウィリアム・ポスターズの死」(アラン・シリトー著)を読破した。
本の中で、これから行くスペイン南部の地名や植物名を風景描写のためにふんだんに使ってくれていたので、興味津々でメモを取りながら読んだ。実際に見るのが楽しみだ。
※行きの船
そして、刺さる言葉も多かった。主人公は不満が多い批判屋だが、何か成し得るかというと、逃げてばかりだ。その彼と対比するため筆者が一般の人は「借りものの思想を、自分のもののように口にする勇気を持っている」と書いた。勇気...そう。わかっていて当たり前を出来ることが大切なのだ。出来ていない。気をつけよう。
白い風景はいつしか暗闇に変わり、明かりが見え始めた。
バルセロナだ。
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